2009年9月18日金曜日

行き過ぎた保護活動と生物多様性の破壊と自然環境の調和

 近年、自然保護や地球環境に関心が高まり、多くの人が海岸・河川清掃等の環境保護・保全活動に参加される中、自然保護や種の保存などと称し、すでに絶滅してしまった“種(絶滅種〔Extinct Species〕)の復活” “絶滅の危機に瀕している種(絶滅危惧種〔Endangered Species〕)の保護”、などという愚かな活動を一部の自然保護団体や自然愛好家が行っている。その行為が、美談として、あるいは、素晴らしいことであるかのように、新聞、雑誌、テレビなどで報道されている。
 そもそも、その地域に生息していた生物が環境の悪化(人間の活動)にともなって絶滅してしまったのだから、絶滅してしまった種を復活させるなどということは、死んでしまった人間を「生き返らす。」と言っているようなものだ。それでは、いったいどこから絶滅してしまった種をつれて来たのだろうか。まさか、「生き返らせた。」と言うのではないだろう。だとすると、どこかの地域で捕獲・採取され、繁殖飼育された種を放流あるいは、放蝶または放虫しているのだろう。(魚類や昆虫に限らず植物においても同様である。)確かに見た目にはどこの地域の種であても、ゲンジボタル〔Luciola cruciata Motschulsky, 1854 〕はゲンジボタルに変わりないのである。ゲンジボタルは、その発光の強さや飛翔の優雅さなどから、日本のホタル類の中でも人目を引きやすい。そのため、観光や自然回復をアピールする目的で、しばしば他地域から人為的に移入されてきた。無論、ゲンジボタルの生息地に「ホタルには変わりないのだ。」と言って、ヘイケボタル〔Luciola lateralis Motschulsky, 1860〕の幼虫を放流することはないであろうが・・・・・・?。
 現段階ではゲンジボタルは種より下位の亜種には分けられてない。しかし、種より下位の分類群の多様性も保護されるべきであることは世界共通の認識となりつつある。実際、1993年に日本が締結した生物多様性条約(Convention on Biological Diversity)第2条には, 「生物多様性」の定義として、種内(within species)多様性も明記されている。この国際条約に基づいて制定された日本の生物多様性基本法(平成20年6月6日施行)第2条も同様である。
 亜種レベルの差異ならば他の亜種との交配が可能であり、「自然を回復させる」との名目で他の場所から生物を持ち込むことは、多様性を失わせて亜種を消滅させることになり種の保全にはマイナスとも言える事態を引き起こす。
 生物の個体はそれぞれある程度の遺伝子を共有する複数個体からなる集団に属し、一つの遺伝子プールを持っている。この集団を繁殖可能集団、デーム、あるいは個体群という。生物種は個体群そのものである場合もあるし、複数の個体群で構成されている場合もある。それぞれの個体群内で生殖が行われ、次世代の個体が生み出される。したがって、ある個体が死んでもその集団は存続するが、その集団に属する全個体が死んだ場合、その集団は消滅する。その場合、近縁であっても異なった集団は別の遺伝子プールを持つ集団であるから、失われた集団と同じものを復元することができない。(ただし、絶滅を回避できても個体が激減している場合はやはり以前と同じ遺伝子プールを復元することはできない)。これが絶滅である。絶滅は不可逆的な現象である。
 ”ホタルの飛び交う里”などと銘打って地域おこしと自然環境保護活動をしているが、その多くは他地域の種を繁殖飼育させ放流しているのだ。(移入)確かに過去にはホタルが飛び交っていただろう。だが、「沢山のホタルが飛び交っていて綺麗だから」というだけで、種の生態系や生息調査などしないで、(日本には40種類以上のホタルがいると言われる。)放流すればわずかに生き残った種と交雑し、遺伝子の撹乱を引き起こし、元々いた天然のゲンジボタルとは進化系統も発光周期も異なる移入ゲンジボタルに入れ替わってしまうのである。
 毎年繰り返し行われる幼虫の放流は、ゲンジボタルが定着し、繁殖できないことを物語っている。あるいは、観光や自然回復をアピールする目的のために定着しないゲンジボタルの放流を繰り返すのだろうか。「自然保護だ。」「種の保存だ。」「自然の回復だ。」など言って、定着しないゲンジボタルの放流を繰り返し、素性の知れないゲンジボタルの幼虫を「環境教育の一環だ。」と、園児や小学生(低学年)に放流させいるのだ。なんとも不思議な光景であり、違和感を憶えるのである。こうした保護・保全活動は人間にととって都合のいい、行き過ぎた自然保護活動である。
 行き過ぎた自然保護活動は、特定の一種のみを増やし、その地域の生態系を破壊するばかりでなく、河川であれば、下流域においてもその影響を及ぼし、広範囲で生態系と生物多様性の崩壊をまねく危険性をはらんでいるのだ。これでは本末転倒である。人間にとって都合の良い自然保護活動などないにひとしいのだ。
 “真の自然保護・種の保存”を言うのであれば、種の生態系や生息状況、環境、生物多様性等の調査行い、特定の種のみを保護・保全するのではなく、生態系そのものを保護・保全しなければならないのである。河川の浄化や自然の回復・水質の浄化だけではなく、親が産卵し、幼虫が蛹化のために上陸する岸辺、休息するための河川周辺の環境まで整備が不可欠であり、また、餌となるカワニナはもちろん、各成長段階に対応した環境が必要である。ホタルが定着したことで河川を含む環境が良くなったと考えるのは、必ずしも十分ではないと言える。たとえばトンボ類であれば、成虫が河川周辺の広い範囲を飛び回り、そこで餌を食べ、種によっては縄張りを作るなどさまざまな行動をする必要があるため、はるかに広い範囲の自然環境を必要とする。狭い範囲の場所のみを保全(保護・保全区域等に指定)したところで、多様な生物が定着し、繁殖するはずがないのである。自然環境はそれほど単純ではなく、人間が頭の中で考えるよりもはるかに複雑なのだ。その複雑な自然環境の調和が保たれてこそ生態系が守られるのだ。それこそが本当の自然保護と言えるのだろう。
 全ての生物は直接的(食物連鎖)あるいは、間接的(死骸や落葉などの分解)に関わり、複雑かつ合理的にその均衡を保っているのである。複雑かつ合理的な均衡が崩れた時、直接的あるいは、間接的にヒトに影響を及ぼすのだ。(すでに、大なり小なり影響を及ぼし始めている。)
 愚かな人間は言う。「生物とヒトは違うのだ。」と、「生物の中でも、ヒトは特別なのだ。」と、・・・・・・。「ヒトは特別なのだから、環境を破壊し、生物を絶滅させても良い。」と言うのであろうか。「ヒトは特別なのだから、特別な能力で特別な何かができる。」と言うのだろうか。ヒトも生物群の中の一種でしかないのだから地球上に生息する生物として、自然環境の調和を今こそ、真剣に考える時なのではないのだろうか。



出典・引用: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ホタル
ゲンジボタル 
ヘイケボタル




2009年9月17日木曜日

ヒレタゴボウ


ヒレタゴボウ Ludwigia decurrens Walter



ヒレタゴボウ(鰭田牛蒡)
別名:アメリカミズキンバイ
学名:Ludwigia decurrens Walter

1) 分 類

   ①クロンキスト体系による分類

      モクレン(被子植物)門 Magnoliophyta
      モクレン(双子葉)綱 Magnoliopsid
      バラ亜綱 Rosidae
      フトモモ目 Myrtales
      アカバナ科 Onagraceae
      チョウジタデ属 Ludwigia L.


*科名は、Arthur Cronquist, ”The Evolution and Classification of Flowering Plants. Second Edition” (1981), The New York Botanical Garden, New York. に基づいています。
*和名は、朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録、「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 - 6に基づきました。


   ②新エングラー体系による分類

      被子植物門 Angiospermae
      双子葉植物綱 Dicotyledoneae
      古生花被植物亜綱 Archichlamydeae
      フトモモ目 Myrtiflorae
      アカバナカ科 Onagraceae
      チョウジタデ属 Ludwigia L.


*科名は、H. Melchior and E. Werdermann (eds.), ”A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien. 2Bd., 12 Aufl.” (1964) Verlag Gebrüder Borntraeger, Berlin
*和名は、朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録、「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 - 6に基づきました

2) 和名・学名の由来

 和名のヒレタゴボウ(鰭田牛蒡)は、タゴボウ(チョウジタデの別名)に似ている(田に生える牛蒡のような根をした植物)が、茎に稜があることから、これを魚のヒレ(鰭)にたとえて付けられた名前。
 学名のLudwigia は、人名 ドイツのライプチヒの植物学教授Christian Gottlieb Ludwig(1709~1773)に因んで付けられた名。種小名のdecurrens は「着点より下に延びた・沿下した」の意味。

3) 特 徴

 水田、休耕田、湿地や溜池畔に生育する1年草。北アメリカ~熱帯アメリカ原産の帰化植物。茎はよく分枝して、高さ100~150cm、無毛で、3~4稜あり、葉の基部はくさび形で稜に沿って流れて、著しい、ひれ(翼)となる。葉は互生し、普通柄がなく、披針形~狭楕円形、長さ5~12cm、幅1.5~3cm、ほぼ全縁で鋭頭、柔らかく光沢があり、しばしば暗紫色をおびる。花は葉腋にまばらに単性。花柄は1-4㎜、花弁は4個、倒卵形で長さ8-12mm、鮮黄色で、直径2.5-3.0cm、散りやすい。萼片は4個、先は鋭く尖り、狭卵形、長さ7~10mmで果時期まで残る。雄蕊8個、葯は、白色花糸は長さ1㎜ほど雌蕊1個で長さ3mm、柱頭は球状。蒴果は明瞭な4稜があり、四角柱状、長さ1~2cm、無毛または微毛がある。種子は長さ約0.4mmで褐色。
 1955年に愛媛県松山市の三津浜で見いだされ、1960年には四国や瀬戸内地方で水田雑草として知られるようになった。現在は関東地方~北部九州地方の湿地に発生し、しばしば水田に侵入する。

4) 分 布
 
  温帯~熱帯 : 関東地方~北部九州地方

5)掲載図鑑とページ番号

 平凡社・日本の野生植物 帰化: 143
 保育社・原色日本植物図鑑 草本2: 44; 帰化: 181
 講談社・Flora of Japan 2c: 224

6) 文献情報(原記載文献など)

Fl. Carol.: 89 (1788); Murata in A. P. G. 16(3): 90 (1956); Sugim. in Yaso 26(3): 4-5 (1960); Osada, Ill. Jap. Alien Pl.: 91, t. 187 (1972); Kadono, Aquat. Pl. Jap.: 132, in nota (1994).

7) 参考文献

 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(Ylist),
  http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html (2009年年9月17日)
 北村四郎・村田源共著 「原色日本植物図鑑・草本編Ⅱ」 保育社(1992)p.44
 永田武正著 「原色日本帰化植物図鑑」 保育社(1992)PLATA 32 p.181
 林弥栄監修 「山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花」 山と渓谷社(2003)p.217
 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七共著 「日本帰化植物写真図鑑」 全国農村教育協会 (2002)
p.206-207 p.502
 朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録
   「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 – 6

8)南伊予における生育地

   1. 愛媛県伊予市宮下字水戸口   27 . Aug . 2009
      33°46′35″N / 132°45′36″E   3次メッシュコード: 5032-5630
      国土地理院 : 1/50,000 松山南部 1/25,000 松山南部

   2. 愛媛県伊予市宮下字於竹川    9 . Spe . 2009
      33°46′39″N / 132°45′31″E   3次メッシュコード: 5032-5630
      国土地理院 : 1/50,000 松山南部 1/25,000 松山南部

   3. 愛媛県伊予市宮下字讃岐屋    16 . Spe . 2009
      33°46′52″N / 132°45′4″E   3次メッシュコード: 5032-5630
      国土地理院 : 1/50,000 松山南部 1/25,000 松山南部




2009年9月7日月曜日

守るべき自然はないと思われていた二次的自然

 白神山地や屋久島の原生自然(Wilderness)は、人為が加わらずに残された貴重な場所として世界自然遺産に登録され、その重要性は広く認知されている。このような場所は国土全体のわずかで、その多くは里地・里山(農村)であり、人為を加えることによって形成された二次的自然(Secondary Nature)が国土の4割を占めている。
 里地・里山(一般的に、主に二次林を里山、それに農地等を含めた地域を里地と呼ぶ場合が多いが、言葉の定義は必ずしも確定しておらず、全てを含む概念として里地・里山と呼ぶ。農業を主体とした都市近郊の集落も含む)は、原生的自然(奥山)と都市地域との中間地域に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、(森林が伐採や火災などで破壊されたあと自然再生してできる林。植林は含まない。)それらと混在する農地、溜池、草原等で構成される地域概念で、農林業にともなうさまざまな人間の働きかけ(人為的撹乱)を通じて環境が形成・維持されてきた地域である。このような里地・里山地域は、人間の手を介入させること自体が「あるがままの自然」ではないとみなし、原生自然ではないのだから、そこには守るべき自然などないと思われていた。
 環境省は、平成11年から自然保護協会などに委託し三ヵ年にわたって日本の里地里山の調査を実施し、分析についての中間報告結果を発表した。①絶滅危惧種(メダカ等かつて身近にいた種を含む)が集中して生息する地域の多くは、原生的な自然地域よりむしろ里地・里山地域である。②かつては身近にいた絶滅危惧種(メダカ、ギフチョウ等)及び絶滅危惧種以外の身近な種(トノサマガエル、ノコギリクワガタ等)の生息地域の5割以上が里地里山にある場合が多いこと。など、里地・里山が、生物多様性保全上(絶滅危惧種をはじめとする野生生物の保護上)極めて重要な地域であることが明らかになった。こうした流れの中で、いつしか「農業・農村風景」は多種多様な生物が生息し、人間達にも「潤い」と「やすらぎ」を与えてくれる重要な財産としてその存在が注目され、さまざまな団体が里地・里山の保全活動をしている。



日本の里地里山の調査・分析について(中間報告)
里地里山パンフレット
生きものと共生する地域づくり
都市近郊における農村の絶滅危惧植物と地域住民との関わり




2009年9月1日火曜日

アゼナ


アゼナ Lindernia procumbens (Krock.) Borbás



アゼナ (畔菜・畦菜)
学名: Lindernia procumbens (Krock.) Borbás
1) 分 類

   ①クロンキスト体系による分類
      モクレン(被子植物)門 Magnoliophyta
      モクレン(双子葉)綱 Magnoliopsid
      キク亜綱 Asterdiae
      ゴマノハグサ目 Scrophulariales
      ゴマノハグサ科 Scrophulariaceae
      アゼトウガラシ属 Lindernia All.

*科名は、Arthur Cronquist, ”The Evolution and Classification of Flowering Plants. Second Edition” (1981), The New York Botanical Garden, New York. に基づいています。
*和名は、朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録、「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 - 6に基づきました。

   ②新エングラー体系による分類

      被子植物門 Angiospermae
      双子葉植物綱 Dicotyledoneae
      合弁花植物亜綱 Sympetalae
      シソ目 Tubiflorae
      ゴマノハグサ科 Scrophulariaceae
      アゼトウガラシ属 Lindernia All.

*科名は、H. Melchior and E. Werdermann (eds.), ”A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien. 2Bd., 12 Aufl.” (1964) Verlag Gebrüder Borntraeger, Berlin
*和名は、朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録、「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 - 6に基づきました。

2) 和名・学名の由来

 和名のアゼナ(畔菜・畦菜)は、田圃のアゼに生えるから「アゼナ」
 学名のLindernia(リンデルニア) は、ドイツの医学者で植物学者Franz Balthasar Lindern(1682~
   1755)に因んで付けられた名。種小名のprocumbens は「伏臥した・這った・倒伏形の」の意味。

3) 特 徴

 水田や畦周辺の湿地に生える1年生の水田雑草。稲作伝播とともに定着した史前帰化植物との説が有力である。全体に毛はなく、茎は4角柱で、高さ10-20㎝下部で分枝し、普通直立する。葉は卵型で長さ1.5-3㎝、巾0.5-1.2㎝で、葉柄がなく、3~5本の平行脈が目立ち、全縁で鋸歯はない。表面にやや光沢がある。花は葉腋につき、長い柄があり、萼は5深裂し、長さ3-3.5㎜、花冠は唇形で長さ約6mm。雄蕊4本とも完全で2本は短い。蒴果は球状楕円形で長さ3.5mm、開放花の開花に先立って、閉鎖花を付けることが多い。

4) 分 布 

  温帯~熱帯 : 日本全土 アジア ヨーロッパ

5)掲載図鑑とページ番号

 平凡社・日本の野生植物 草本 3: 105, c.a.e. Philcox
 講談社・Flora of Japan 3a; 337
 至文堂・日本植物誌 1331

6) 文献情報(原記載文献など)

Bekes Vamegye Fl.: 80 (1881); Kitag. in Bull. Bot. Soc. Nagano no. 10: 4 (1977), Neo-Lineam. Fl. Mansh.: 564 (1979); Ivanina in Kharkev., Pl. Vasc. Or. Extr. Soviet. 5: 291 (1991); W.T.Lee, Lineam. Fl. Kor. 1: 993 (1996); D.Y.Hong et al., Fl. China 18: 32 (1998). The same comb. was made by Philcox in Taxon 14: 30 (1965), in Kew Bull. 22: 29, f. 5, 5-8 (1968); Hatus., Fl. Ryukyus: 850, in corrig. (1971), ’procumbe’; T.Yamaz. in J. J. B. 52: 254 (1977). basion.: Anagalloides procumbens Krock., Fl. Siles. 2(1): 398, t. 26 (1790). Type (icon.): t. 26 of Krocker (1790).

7) 参考文献

 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(Ylist),
  http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html(2009年9月1日)
 北村四郎・村田源共著 「原色日本植物図鑑・草本編Ⅰ」 保育社(1992) PLATE 45 p.145-146 f.48;1.s.
 永田武正著 「原色日本帰化植物図鑑」 保育社(1992)PLATA 19 p.102
 林弥栄監修 「山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花」 山と渓谷社(2003)p.141
 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七共著 「日本帰化植物写真図鑑」 全国農村教育協会 (2002)
p.294-295
 朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録
   「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 – 6

8)南伊予における生育地

   1. 愛媛県伊予市宮下字水戸口   16 . Aug . 2009
      33°46′34″N / 132°45′29″E   3次メッシュコード: 5032-5630
      国土地理院 : 1/50,000 松山南部 1/25,000 松山南部

 最も普通に水田で見られる種のひとつだが、宮下の水田では、外来種のタケトアゼナ(Lindernia dubia (L.) Pennell subsp. dubia)の生育が一番多く、次いでアメリカアゼナ(Lindernia dubia (L.) Pennell subsp. major (Pursh) Pennell)であり、在来種のアゼナ (Lindernia procumbens (Krock.) Borbás)の生育は比較的少ない。また、生育地の水田では何れの種も単独での生育は見られず、複数種の混生である。小型のヒメアメリカアゼナ(Lindernia anagallidea (Michx.) Pennell)も帰化しているようだが、宮下では未確認である。

9)アゼナ類の区別

 アゼナ類には、アゼナ(Lindernia procumbens (Krock) Borbas)、アメリカアゼナ(Lindernia dubia (L.) Pennell subsp. major (Pursh) Pennell )、タケトアゼナ(Lindernia dubia (L.) Pennell subsp. dubia ) 、ヒメアメリカアゼナ(Lindernia anagallidea (Michx.) Pennell)がある。このうち、アメリカアゼナとタケトアゼナ、ヒメアメリカアゼナとも北アメリカ原産の帰化種で、アメリカアゼナとタケトアゼナは非常に良く似ているが、葉の基部が細く葉柄状になるのがアメリカアゼナ、葉の基部が丸く葉柄が見られないものがタケトアゼナで、葉の形態で両者を区別することができる。また、ヒメアメリカアゼナは花柄の長さで区別することができる。

  a. 在来種

    アゼナ Lindernia procumbens (Krock.) Borbás
        茎は4角柱。葉は卵状楕円形で5本の平行脈が目立つ。葉は葉柄がなく、全縁(鋸歯がない)。


  
 b. 外来種 ( 帰化種 )
    アメリカアゼナ Lindernia dubia (L.) Pennell subsp. major (Pursh) Pennell
      (Lindernia dubia var. major Pennell)アメリカアゼナのCタイプ(cuneate[くさび状の]の頭文字)
        北アメリカ原産、1936年帰化を確認
        茎は4角柱。葉の基部が葉柄状に細くなる。葉に明瞭な鋸歯がある。





    タケトアゼナ Lindernia dubia (L.) Pennell subsp. dubia
      (Lindernia dubia var. dubia Pennell)アメリカアゼナのRタイプ(round[丸い]の頭文字)
        北アメリカ原産、1936年帰化を確認
        茎は4角柱。葉の基部が丸く葉柄はない。葉に鋸歯があるがやや不明瞭。




     ヒメアメリカアゼナ Lindernia anagallidea (Michx.) Pennell
         北アメリカ原産、1933年帰化を確認
         アメリカアゼナと混同されがちたが、花柄が包葉の1.5~3 倍位長い。


  c. 交雑種
    不明または未発見



雑 記 : 除草抵抗性雑草

 北海道・東北の水田で、除草剤を散布してもある種の広葉雑草が数多く残るという問題が起こっているらしい。最近は一発処理剤と呼ばれる除草剤が広く使われているらしいが、広葉雑草に効く成分としてスルホニルウレア系除草剤(SU剤)と呼ばれる成分が入っていて、このSU剤が効かなくなっているらしい。SU剤の効かない雑草(SU抵抗性雑草)は、外見上は全く同じため、外見だけで判別するのは困難なようで、水田に多数残っているというだけでは、判別できならしい。
 南伊予地区の水稲農家でも、一発処理剤を使用していると聞く。詳しくは分からないが、南伊予地区でもSU抵抗性雑草が発現しても何ら不思議ではない。
 これまでに見つかっているSU剤の効かない雑草が数多く見つかっているのは、アメリカアゼナ、アゼナ、タケトアゼナ、アゼトウガラシなどのアゼトウガラシ属雑草、イヌホタルイ、コナギだそうだ。まだ問題になっていない水田でも、同じ除草剤を毎年使うのは避けた方が良いようだ。

 薬剤抵抗性(やくざいていこうせい)とは生物の集団に薬剤を使用することにより、抵抗性因子が淘汰により蓄積される現象のこと。薬剤耐性とも呼ばれる。

東北農業研究センターHP 雑草の関連情報より引用



東北農業研究センター 雑草の関連情報 
http://tohoku.naro.affrc.go.jp/DB/weed/boujyo.html




生物の多様性に関する条約

 「生物の多様性に関する条約」( Convention on Biological Diversity / CBD、平成5年条約第9号)とは、生物の多様性を「生態系」「種」「遺伝子」の3つのレベルでとらえ、①生物多様性の保全、②生物多様性の構成要素の持続可能な利用、③遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的とする国際条例である。
 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」や「ラムサール条約」のように、特定の行為や特定の生息地のみを対象とするのではなく、野生生物保護の枠組みを広げ、地球上の生物の多様性を包括的に保全することが、この条約の目的である。 また、生物多様性の保全だけでなく、「持続可能な利用」を明記していることも特徴の一つである。
 条約加盟国は、生物多様性の保全と持続可能な利用を目的とする国家戦略または国家計画を作成・実行する義務を負う。 また、重要な地域・種の特定とモニタリングを行うことになっている。
さらに、生物多様性の持続可能な利用のための措置として、持続可能な利用の政策への組み込みや、先住民の伝統的な薬法など、利用に関する伝統的・文化的慣行の保護・奨励についても規定されている。



出典・引用: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』生物の多様性に関する条約 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%A4%9A%E6%A7%98%E6%80%A7%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84

生物の多様性

環境省へようこそ! 
http://www.env.go.jp/

生物多様性 -Biodiversity-





2009年8月30日日曜日

イヌガラシ

イヌガラシ Rorippa indica (L.) Hiern



イヌガラシ (犬芥子)
学名:Rorippa indica (L.) Hiern

1) 分 類

   ①クロンキスト体系による分類

      モクレン(被子植物)門 Magnoliophyta
      モクレン(双子葉)綱 Magnoliopsid
      ビワモドキ亜綱(ディレニア亜綱) Dilleniidae
      フウチョウソウ目Capparales
      アブラナ科 Brassicaceae
      イヌガラシ属 Rorippa Scop.

*科名は、Arthur Cronquist, ”The Evolution and Classification of Flowering Plants. Second Edition” (1981), The New York Botanical Garden, New York. に基づいています。
*和名は、朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録、「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 - 6に基づきました。

   ②新エングラー体系による分類

      被子植物門 Angiospermae
      双子葉植物綱 Dicotyledoneae
      古生花被植物亜綱 Archichlamydeae
      ケシ目 Papaverales
      アブラナ科 Cruciferae
      イヌガラシ属 Rorippa Scop.

*科名は、H. Melchior and E. Werdermann (eds.), ”A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien. 2Bd., 12 Aufl.” (1964) Verlag Gebrüder Borntraeger, Berlin
*和名は、朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録、「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 - 6に基づきました。

2) 和名・学名の由来

 和名のイヌガラシ(犬芥子)は、芥子(カラシナ:芥子菜)に花や葉、果実が似ているけど役に立たないことからイヌという接頭語がついている。カラシに似ているが食べられないまがい物ということのようだが、中国では薬用植物として扱われており、全く役に立たないわけではないようである。
 学名のRorippa(ロリッパ) は、イヌガラシ属の植物対するサクソン語の古名「イヌガラシ属の植物 Rorippen 」が語源。種小名のindica(インディカ) は「インドの」の意味。

3) 特 徴

 湿った道端、水田の畦、休耕田、用水路、溝、河川敷、溜池畔などいたるところで見られる多年草。茎は直立または斜上して高さ30~55cm、無毛、よく分枝する。葉は倒披針形または長楕円状披針形ときに卵形、長さ6~15cm、鈍頭、頭大羽状中裂または歯牙縁、無毛、基部は狭まって葉柄状となり、小さい耳状に茎を抱く。花弁は黄色、狭倒卵形、長さ3~3.5mm。萼片は長楕円形。果実は開出してまっすぐかまたはやや曲がり、円柱形、長さ16~20mm、幅1~1.2mm。果柄は5~7mm。柱頭は0.5~1mm。種子はやや不定な楕円形で長さ0.7mm。

4) 分 布 

  温帯~熱帯 :北海道  本州 四国 九州 朝鮮 中国 印度

5)掲載図鑑とページ番号

  平凡社 「日本の野生植物草本 2 」 p. 136 
  保育社 「原色日本植物図鑑 草本Ⅱ」 p. 184, c.a.e. Hieron. 
  至文堂 「日本植物誌」 p.767, c.a.e. Hochr. 

6) 文献情報(原記載文献など)

Cat. Afr. Pl. Welw. 1: 26 (1896); H.Hara in J. J. B. 30: 197 (1955); Ohwi, Fl. Jap. ed. Engl.: 468 (1965); Hatus., Fl. Ryukyus: 299 (1971); T.S.Liu, Fl. Taiwan 2: 696 (1976); R.L.Guo in T.Y.Cheo et al., FRPS 33: 301, t. 84; 1-3 (1987); Rollins, Crucif. Cont. N. Amer.: 754 & 755 (var. indica) (1993); W.T.Lee, Lineam. Fl. Kor. 1: 418 (1996); T.Y.Zhou (Cheo) et al., Fl. China 8: 133 (2001). basion.: Sisymbrium indicum L., Sp. Pl. ed. 2, 2: 917 (1763). Type (fide Hara 1955): India or. (LINN 836.52)

7) 参考文献

米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(Ylist),
 http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html(2009年8月30日)
北村四郎・村田源共著 「原色日本植物図鑑・草本編Ⅱ」 保育社(1992)PLATE 44 p.183-184 
永田武正著 「原色日本帰化植物図鑑」 保育社(1992)p.277-278
林弥栄監修 「山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花」 山と渓谷社(2003)p.312-313
朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録
  「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 – 6

8)南伊予における生育地

   1. 愛媛県伊予市宮下字水戸口   13 . Aug . 2009
      33°46′33″N / 132°45′31″E   3次メッシュコード: 5032-5630
      国土地理院 : 1/50,000 松山南部 1/25,000 松山南部

9)イヌガラシ属 (Rorippa Scop. )の植物

   a. 在来種

      コイヌガラシ Rorippa cantoniensis (Lour.) Ohwi
      イヌガラシ Rorippa indica (L.) Hiern
      ナガミノイヌガラシ Rorippa indica (L.) Hiern f. longicarpa (Koidz.) Kitam.
      アオイヌガラシ Rorippa indica (L.) Hiern var. apetala Hochr.
      コゴメイヌガラシ Rorippa teres (Michx.) Stuckey
      ミギワガラシ Rorippa nikkoensis H.Hara 
      ミチバタガラシ Rorippa dubia (Pers.) H.Hara
      スカシタゴボウ Rorippa palustris (L.) Besser 

   b. 外来種 ( 帰化 )

      サケバミミイヌガラシ Rorippa amphibia (L.) Besser
      ミミイヌガラシ Rorippa austriaca (Crantz) Besser
      マガリミイヌガラシ Rorippa curvisiliqua (Hook.) Bessy ex Britton
      キレハイヌガラシ Rorippa sylvestris (L.) Besser

   c.交雑種

      キレハミミイヌガラシ Rorippa × armoracioies (Tausch) Fuss
          ミミイヌガラシ × キレハイヌガラシ
      ヒメイヌガラシ Rorippa × brachyceras (Honda) Kitam. ex T.Shimizu
          イヌガラシ×スカシタゴボウ




追い討ちをかける

 20世紀の科学技術の進歩は、さまざまな夢を実現し、豊かな生活を手に入れることがでるようになった。そして、大量生産・大量消費という生活様式は、自然環境だけではなく、人々の暮らしまで侵食し続けた。その結果、地球温暖化を引き起こし、オゾン層を破壊し、熱帯雨林を激減させた。地下水の枯渇、砂漠化、酸性雨、塩害、海洋汚染などによって地球規模で生物種の絶滅が加速している。
 南伊予も例外ではなく、その脅威を見てとれる。バケツをひっくり返したような雨の降り方、平均気温の上昇、草木の開花時期・開花期間の変化、南方系の鳥類・昆虫類の目撃など、あらゆる所でゆるやかではあるが確実に進行しているのである。
 飽くなき人類の欲望は、高度な科学技術よって私たちに文化的生活と経済的豊かさ(物質)をもたらしたが、その引き換えに豊かな自然環境と心(精神)の豊かさを失わせる結果となった。
 現代の子どもたちは、豊かな自然環境と素朴な共同体に支えられて成長していったかつての子どもたちとは異なり、極めて人工的な環境で生活することを余儀なくされているのだ。真夜中まで眠らない子ども、長時間TVゲームにはまってしまう子ども、ファーストフードで育つ子ども、TVの残虐シーンに魅せられる子ども、受験地獄、育児放棄、人間らしい触れ合いの希薄な子どもなど、現代の子どもの諸問題の多くは、人工的な成育環境が少なからず影響しているように思う。そのような子どもたちが大人に成った時、その時代はどうなっているのだろうか。自然環境は失われ、人間らしい触れ合いのない極めて人工的な環境の中で無味乾燥な生活を送っているのだろうか。そのような子どもたちの体の成長や心の発達を支えていくためには、従来の子育てや教育の考え方による対応だけでは難しく、特に子どもに生命の仕組みや生態系について考える生物学的な視点は必要不可欠なものと言えるだろう。
 最近、「生物多様性(biodiversity)」という言葉が盛んに使われるようになった。生物多様性とは何か。このままでは人類の生存すら危うくなるのではないか、といった漠然とした不安、危機感から生まれた新しい言葉なのだ。 生物多様性は、遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性という3つのレベルで考えるのが一般的である。これに景観の多様性を加える人もいる。自然保護あるいは環境、生態系を論ずる場合、今や「生物多様性」の意味を理解せずには語れない時代になった。
 環境省では、生物多様性センターを設置し、ホームページなどで生物多様性の保全を訴えている。が、しかし、大量生産・大量消費という生活様式(経済的・物質的豊かさ)に侵食された人々は、社会秩序や道義的責任を無視し、大量の産業廃棄物と粗大ゴミを投棄し、「自然にやさしいエネルギー」と言う大義名分の元、渡り鳥の飛行コースに風力発電施設を設置し、「自然保護だ」と言って、他地域の生物個体(メダカやホタルなど)を野外に放ち、「地球環境の保護- CO2の削減」などと言って、その地域の森林生体系を無視した植林をするなど、安易に行われる動植物の移植、移入、このような人間の愚かな行為でますます自然環境は破壊され、生物の多様性も失われていくのだ。そして、行き過ぎた自然環境保護運動により伝統文化までも消滅するのである。



環境省 自然環境局 生物多様性センター http://www.biodic.go.jp/
 


2009年8月29日土曜日

ウマノスズクサ


ウマノスズクサ Aristolochia debilis Siebold et Zucc.



ウマノスズクサ (馬の鈴草)
学名 : Aristolochia debilis Siebold et Zucc.

1) 分 類

   ①クロンキスト体系による分類

      モクレン(被子植物)門 Magnoliophyta
      モクレン(双子葉)綱 Magnoliopsida
      モクレン亜綱 Magnoliidae
      ウマノスズクサ目 Aristolochiales
      ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae
      ウマノスズクサ属 Arstolochia

*科名は、Arthur Cronquist, ”The Evolution and Classification of Flowering Plants. Second Edition” (1981), The New York Botanical Garden, New York. に基づいています。
*和名は、朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録、「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 - 6に基づきました。

    ②新エングラー体系による分類

      被子植物門 Angiospermae
      双子葉植物綱 Dicotyledoneae
      古生花被植物亜綱 Archichlamydeae
      ウマノスズクサ目 Aristolochiales
      ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae
      ウマノスズクサ属 Aristolochia

*科名は、H. Melchior and E. Werdermann (eds.), ”A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien. 2Bd., 12 Aufl.” (1964) Verlag Gebrüder Borntraeger, Berlin
*和名は、朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録、「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 - 6に基づきました。

2) 和名・学名の由来

 和名のウマノスズクサ(馬の鈴草)は、中国語の名の馬兜鈴(ばとうれい)が由来で、
6に裂開した球形の実の裂片が垂れ下がっている様子が馬の首に掛ける鈴に似ていることから名付けられたらしい。
  学名の Aristolochia は、「最良 aristos」+「出産 locheia」で、曲がった花の形が胎児を、基部の膨らみが子宮を思わせるため、出産を助ける力をもつと考えられたことによるようだ。種小名の debilis は「弱小な、軟弱な」の意味。

3) 特 徴

 川の土手や畑、林縁などに生える多年生のつる植物。全体に無毛で粉白をおび、茎は細く丈夫でよく分岐し長さ1.5mに達し、ほかの草や木にからみつく。葉は互生し、長さ4㎝から7㎝の三角状卵形。基部は心形で両側が耳状にはりだす。7月~9月頃、葉腋にサキソフォンに似た形の紫緑色の花を1個ずつつける。花柄は子房を含めて2~3㎝、花被は基部が球形にふくれ、細長い筒がつづき、ゆるく湾曲し、先端は斜めに切り落としたような形で、やや反り返る。舷部は三角形で先は尖る。長さ3㎝内外、下部内面に毛があり6花柱が合して多肉の短柱となり、周囲に花糸のない葯がつく。蒴果はやや細長い球形で長さ1.5㎝、6裂し、花柄の先端も6裂してぶらさがる。
 
4) 分 布

温帯~暖帯 : 本州(関東地方以西) 四国 九州 沖縄 中国

5)掲載図鑑とページ番号

 平凡社 「日本の野生植物草本 2 」p. 103
 保育社 「原色日本植物図鑑 草本Ⅱ」p. 319, f. 141; 2
 至文堂 「日本植物誌」p.606

6) 文献情報(原記載文献など)

Abh. Akad. Muench. 4(3): 197 (1846); Duch. in DC., Prodr. 15(1): 483 (1864); Miq. in A. M. B. L.-B. 2: 135 (1865); Franch. & Sav., EPJ 1: 420 (1875); Forbes & Hemsl. in J. L. S. B. 26: 361 (1891); Rehder & E.H.Wilson in Sarg., Pl. Wilson. 3: 323 (1921); Hand.-Mazz., Symb. Sin. 7(2): 247 (1931); O.C.Schmidt in Engl. & Prantl, Nat. Pfl.-fam. ed. 2, 16B: 241 (1935); Nemoto, Fl. Jap. Suppl.: 157 (1936); Ohwi, Fl. Jap.: 456 (1953); S.M.Hwang in H.S.Kiu & Y.R.Ling, FRPS 24: 235, t. 56, f. 5-9 (1988); J.S.Ma in A. P. S. 27: 340 (1989).

7) 参考文献

 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList),
 http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html(2009年8月29日).
北村四郎・村田源共著 「原色日本植物図鑑・草本編Ⅱ」 保育社(1992)p.319 PLATE68
林弥栄監修 「山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花」 山と渓谷社(2003)p.364
朝日新聞社編 週刊朝日百科「植物の世界」創刊号別冊付録
  「植物用語集+植物分類表」(1994)の「植物分類表」(清水建美監修)p.4 – 6

8)南伊予における生育地

    1. 愛媛県伊予市宮下字本谷   10 . Aug . 2009
       33°46′29″N / 132°45′42″E  3次メッシュコード: 5032-5620
       国土地理院  1/50,000 松山南部  1/25,000 松山南部

9)ウマノスズクサ属(Arstolochia )の植物

     マルバウマノスズクサ Aristolochia contorta Bunge
         分布・生育地: 本州(山形~島根県の日本海側) 林縁  花期: 7~8月
         環境省レッドデータブック: 絶滅危惧IB類(EN)

     ウマノスズクサ Aristolochia debilis Siebold et Zucc.
         分布・生育地: 本州(関東以西)~九州 草地や林縁  花期: 6~8月
         環境省レッドデータブック: 記載なし

     オオバウマノスズクサ Aristolochia kaempferi Willd.
         分布・生育地: 本州(関東以西)~九州 林縁  花期: 5月
         環境省レッドデータブック: 記載なし

     タンザワウマノスズクサ Aristolochia kaempferi Willd. var. tanzawana Kigawa
         分布・生育地: 本州(関東~東海地方)  山地の林縁  花期: 5~6月
         環境省レッドデータブック: 記載なし

     リュウキュウウマノスズクサ Aristolochia liukiuensis Hatus.
         分布・生育地: 奄美大島~沖縄 林縁  花期: 12月~4月?
         環境省レッドデータブック: 記載なし

     アリマウマノスズクサ Aristolochia shimadae Hayata
         分布・生育地: 本州(近畿以西)~沖縄 林縁  花期: 5~6月(沖縄は12~3月)
         環境省レッドデータブック: 記載なし

     コウシュンウマノスズクサ Aristolochia zollingeriana Miq.
         分布・生育地: 沖縄県(宮古諸島)  林縁  花期: 7~9月?
         環境省レッドデータブック: 絶滅危惧II類(VU)




雑 記 : ジャコウアゲハの食草

 ジャコウアゲハ(麝香揚羽:Byasa alcinous alcinous (Klug, 1836)〔Aristlochia debilis Sieb. et Zucc.〕)は南方系の蝶で、幼虫はウマノスズクサ属(Aristolochia sp.)の植物のみを食草としている。繁殖力が強く、また食草を良く食べるため、食草がなくなると共食いをすることもあるらしい。
 ジャコウアゲハの食草であるウマノスズクサ(Aristolochia debilis Siebold et Zucc.)には、フェナンスレン骨格にニトロ基を有する特異な構造もつ植物アルカロイドの一種であるアリストロキア酸(Aristolochic acid)とスギ科の落葉樹セコイアにも含まれるありふれたイノシトール系の化合物セコイトール(Sequoyitol)が含まれいる。
 アリストロキア酸は、ウマノスズクサ属(Aristolochia sp.)の植物には広く含まれる毒素で、人間にとっては腎機能障害を起こす有害な成分で発ガン性があるといわれているが、ウマノスズクサはこの毒素を作ることで昆虫による食害から身を守っている。(植物の多くは、何らかの毒素を生産している。)
 ジャコウアゲハはこの毒素に対する耐性を獲得してうまく利用し、メスは食草中に含まれるアリストロキア酸とセコイトールという二つの物質が混在することを前肢にある多数の針のような毛で、葉の表面に傷をつけて確認してから産卵する。そして、産んだ卵にアリストロキア酸を含むクリームを塗布して外敵から守り、孵化した幼虫は、この卵の殻を食べて効率的に毒素で武装する。幼虫はウマノスズクサをせっせと食べてアリストロキア酸を体内に蓄積し、その毒素で小鳥などの天敵から身を守っているという。




       
 アリストロキア酸Ⅰの化学構造式         セコイトールの化学構造式




フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 ジャコウアゲハ
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%82%A2%E3%82%B2%E3%83%8F

黒蝶の戦略 ジャコウアゲハの超能力
http://members.jcom.home.ne.jp/kisono/jakouageha2/jakouageha2.htm

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 アリストロキア酸
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%AD%E3%82%A2%E9%85%B8
 



 
雑 記 :ホソオアゲハとジャコウアゲハと環境破壊

 ホソオアゲハ(別名:ホソオチョウ 学名:Sericinus montela (Bremer et Grey, 1852))は、朝鮮半島~中国大陸、沿海州に分布する種で、このチョウはもともと日本には分布しておらず、人為的理由(人間の手によって意図的に行われる放蝶)で分布を広げているのがホソオアゲハである。
 国内では、1978年7月18日に東京都日野市百草園で初めて見つかり、翌年には八王子市で生息が確認された。その後、東京都から山梨県にかけての河川敷で局地的に多産していることが判った。1993年には京都府でも発見され、その後、岐阜県~福岡県にいたる地域で、局地的に記録されており、一部では現在も発生を続けている。1990年代前半まではホソオチョウの全盛期で、一時は多摩川周辺を中心に埼玉県所沢市などで数百匹が見られるといった状態になったという。現在では衰退しているらしいが、京都府周辺はかつての山梨県と同様にかなりの個体数が見られるらしい。
 ホソオチョウの分布が確実なのは山梨県東八代郡中道町周辺の、笛吹川のごく一部と栃木県や茨城県、埼玉県、神奈川県、京都府周辺、(滋賀県、大阪府、兵庫県)さらには宮城県、群馬県、長野県、静岡県、岡山県、山口県、徳島県、福岡県でも生息が確認されている。
 本種はもともと飛翔力の乏しい種類で特にメスは食草であるウマノスズクサの群落からあまり離れることがない。このような種が各地に局所的分布(数ヶ所の狭い範囲の発生)を拡大している背景には意図的な放蝶行為が繰り返されていると思われる。最初、馬鹿な蝶の愛好家が、韓国から違法に持ち込んで飼育したものを放蝶し、更に、その子孫が馬鹿な蝶の愛好家によって捕獲、飼育され、各地で人為的に放蝶されたものと考えられる。何故ゆえにこのようなことをするのであろうか。 「ホソオアゲハは、どことなくはかなげで弱々しくゆったりとした飛び方をし、その姿・色・模様といい何とも優雅な蝶なので、数百匹が飛んでいる様を見たい。」等と放蝶して、野外への定着を試みる馬鹿な蝶の愛好家がいるのだろうか。だが、このような生態系を完全に無視した放蝶は最悪の行為だ。自己満足のために他人の権利を無視し、傷つけるようなものである。
 ホソオアゲハの幼虫はマルバウマノスズクサとウマノスズクサを基本的な食草として利用しており、在来種のジャコウアゲハとの競合が懸念される。オオバウマノスズクサがある場合にはジャコウアゲハはオオバウマノスズクサを利用するが、ウマノスズクサしかない地域では、両者が同じ資源を利用することになり、競合が起こると考えられ、ジャコウアゲハの絶滅という事態を招く可能性もある。また、最近では神奈川県でナガサキアゲハ・アカボシゴマダラという場違いなチョウ(南方系のチョウ)が信じられない勢いで増えているらしい。ナガサキアゲハは自然に北上して棲み付いたようだが、アカボシゴマダラはホソオチョウと同じく人為的に持ち込まれたものだろうと考えられる。外国産のカブトムシやクワガタ、ブラック・バスやブルーギルについても同じで、在来種を絶滅に追いやっていることは否定できない。
 全く関係のない蝶の愛好家や昆虫愛好家の方々が「悪質な蝶マニア・昆虫マニア」などと呼ばれ、後ろ指を指されて肩身の狭い思いをしなくてはならなくなる。更に、「採集=悪いこと、放蝶=良いこと」といった考えが世に広く知れ渡り、ギフチョウやオオムラサキなどの放蝶やホタルの幼虫などの放流がしばしマスコミに美談として報道され、ますます採集者への偏見が見受けられる。(蝶や昆虫に限ったことではないのだが・・・・・)悪質な蝶マニアと呼ばれる卵から幼虫から食草から山菜から根こそぎ持って帰る人や、放虫ゲリラと呼ばれる生態系を無視した人も蝶の愛好家や昆虫愛好家の中にいることは事実であるが、これはほんのごく一部である。また、一部の馬鹿な蝶の愛好家や昆虫愛好家だけではなく、在来種の保護・絶滅危惧種の保護であるということで、ある特定の場所に数多くの在来種一種のみを放蝶・放虫する一部の馬鹿な自然愛好家、自然保護団体などがいることは、生態系と生物多様性を考えたとき、他の生物(特定の一種のみで生態系は成り立っていない。)に多からず影響を及ぼす。(同種あるいは、他種生物との食草等をめぐる競合など→食草などの絶滅→他の域からの食草を移植・他の域の生物を移入=自然保護・絶滅危惧種の保護・絶滅種の復活→人間の自己満足・思い上り→自然環境と生態系の破壊・生物多様性の崩壊→自然破壊=人類の滅亡)
 ある限られた地域の環境の中では、生息できる生物の数が決まっていて、無闇に特定の一種(ギフチョウやオオムラサキなど絶滅危惧種)を放蝶・放虫することは生態系の秩序を乱す破壊行為に過ぎないのである。(悪質な蝶マニア・昆虫マニアとなんら変わりない。)
 在来種(絶滅危惧種)の保護で最も大事なことは、環境を守り保全し絶滅危惧種(辛うじて生き残った種)が自然発生的に繁殖し個体数が増えることが望ましいのだ。環境の保護や保全すらろくにせず、絶滅危惧種だからと勝手な放蝶や放虫・魚類の放流・植物の植栽などは行わないことである。また、絶滅種の復活などといって、他の地域の蝶を放蝶したり、昆虫を放虫したり、他の地域の植物を植栽したりすることは、絶滅種の復活ではないのである。絶滅してしまった種を復活することなどできないのであり、人間の思い上りである。見た目上は絶滅種を復活できたように見えるが、いちど絶滅してしまった地域亜種群を復活させることなどできない。
 自然保護を考えるとき、絶滅危惧種を絶滅させないよう環境を保全し、自然発生的に繁殖し、個体数が増える環境を創ることこそが、真の自然保護いえるだろう。そして、人間も自然界の一生物であるに過ぎないこと、自然界いから多くの恩恵を受けていること、科学技術がいかに進歩・発展しようとも、それらは自然界の摂理と原理の発見とその利用に過ぎないこと知ることである。そして、これ以上、生態系が乱れ、環境が破壊され、人類が自らの手で滅亡の扉を開けることのないように願うのである。



蝶の図鑑に収録している蝶の一覧

環境省 自然環境局 外来生物法

 

南伊予の自然環境と現状


 南伊予は、松山平野(道後平野)の南縁部に広がる北斜面のゆるやかな傾斜地で、標高4m(下三谷 四反地)から403m(行道山)の低地帯(丘陵帯)であり、原生自然(Wilderness1 : 太古の昔から人の手が入らず、遷移が進行した結果、安定的な生態系を形成している自然)の残る地域ではなく、二次的自然(Secondary Nature)である。
 古くは、米作を中心とした純農村であり、1955年(昭和30年)頃には、温州みかん等の柑橘類の栽培が盛んになり、多くの山林を開墾し、みかん畑を造り、水田や畑、水路など農業水利施設を維持管理してきた。農家や土地改良区の仕事の結果生まれた二次的自然環境あり、農業が守り育ててきたこれらの環境には、長い年月を掛けて多種多様な生物が生息するようになり、多種多様な生態系が形成された。(森林生態系、草原生態系、水田生態系、ため池・湖沼生態系、河川生態系など)人が手を加えること(人為的撹乱)で管理・維持されてきた自然環境(人工的であったが、美しい農村の風景であったと思う。)ではあったが、経済の成長と共に多く自然環境が失われ、生息していた生物もその姿を消しつつある。
 近年は、農業従事者の高齢化と農産物の価格低迷により、兼業農家が増え、耕作放棄地の拡大が進んでいる。(農用地全体の13.23 %に及んでいる。)


 耕作放棄地では、人為的撹乱(下草刈りや間伐・田畑の耕作など)が行われなくなったため、二次遷移(すでにあった群落が破壊されて裸地でき、そこから始まる遷移)が進行している。背の高い草がはびこり、落葉樹(アカメガシワ・センダン・ネムノキ等)の侵入が見られ、いずれは森になるかもしれない。「それはそれで良いのではないか。」と言う人もいる。そうかもしれない。しかし、水田や畑という特殊な土地条件が、多種多様な生態系を育んできたことも確だ。そして、美しい景観をも形成してきたのだ。人が手を加え続けることによって維持され、形成された二次的自然(人為が加わることによって、いわば遷移を止めた状態)は、放棄されると二次遷移が進み、二次的自然に特有の動植物が生息できなくなるのである。そして、すでに多くの動植物が絶滅あるいは、絶滅の危機に瀕しているのである。(シロバナタンポポ・ヘビイチゴ・キキョウ・ナデシコ・オミナエシ・フジバカマ・ホタルカズラ・シュンラン・コクラン・ジガバチソウ・ハンミョウ・クロカナブン・アオカナブン・カブトムシ・ミヤマクワガタ・ヒラタクワガタ・マイマイカブリ・ミズスマシ・ゲンジボタル・マツモムシ・モンシロチョウ・アゲハチョウ・カラスアゲハ・ツマグロヒョウモン・ルリタテハ・カタツムリ・アカハライモリ、カラスガイ・タニシ・フナ・メダカ・など等)



2009年8月28日金曜日

南伊予って? 

 南伊予(南伊豫)とは、愛媛県伊予市の東端部に位置する地域の名称であり、1954年(昭和2年)まで愛媛県伊豫郡(現在の愛媛県伊予郡)にあった南伊豫村のことである。
 南伊豫村は、1885年(明治18年)に八倉村(やくら)・宮下村(みやした)・上野村(うえの)・上三谷村(かみみたに)を合併し発足。1888年(明治21)に公布、1889年(明治22年)施行された市町村制(明治の大合併)によって1889年(明治22年)12月15日に下三谷村(しもみたに)を合わせて南伊豫村が成立した。旧村は、大字八倉・大字宮下・大字上野・大字上三谷・大字下三谷となり、南伊豫村役場を大字上野においていた。(村の中央部)
 南伊豫村の村名の由来は、北伊豫村(現在の愛媛県伊予郡松前町の東端部一帯)の南に接する地域であることから南伊豫村と呼ばれていた。あるいは、北伊豫村の村名の由来と同様に伊豫神社(伊予神社:松前町神崎)を中心とした「伊豫」の南側の地という意味であるのかもしれない。
 1955年(昭和30年)1月1日 隣接する郡中町(ぐんちゅう)、北山崎村(きたやまさき)、南山崎村(みなみやまさき)と合併(昭和の大合併)し、伊豫市となり、住所表示等から南伊豫村と言う名称はなくなった。
 2005年(平成17年)4月1日 伊予郡中山町(なかやま)、伊予郡双海町(ふたみ)が伊予市と合併(平成の大合併)し、新伊予市が発足し現在に至っているが、南伊予の名称は、行政において南伊予地区として用いるなど、当該地区に暮らす人々の生活や意識に現在でも定着している。